結論|2026年度末に「全国一斉切り替え」ではありません
母子保健DXについて、まず押さえておきたいことがあります。
2026年度末に、全国の母子保健業務が一斉にデジタルへ切り替わるわけではありません。
国は、PMH(パブリック・メディカル・ハブ)や電子版母子健康手帳を活用した母子保健DXを進めています。
2026年度末からは、乳幼児健診の「集団健診」を中心に、環境が整った自治体から順次、PMHを利用した健診の全国展開を開始する予定です。
そして、現場でもう一つ押さえておきたいのが、
「デジタル化=すぐに業務が楽になる」とは限らない
という点です。
この記事では、母子保健DXでこれから何が変わるのか、自治体の母子保健担当者は今何を確認すればよいのかを整理します。
この記事はこんな人におすすめ
- 市町村の母子保健担当保健師
- 母子保健に配属されたばかりの保健師
- 新任保健師を指導する立場の方
- 母子保健事業を担当する係長・管理職
母子保健DXで何が変わる?
母子保健DXでは、全国共通の情報連携基盤である**PMH(パブリック・メディカル・ハブ)**や電子版母子健康手帳を活用して、母子保健情報をデジタルで扱える環境の整備が進められています。
乳幼児健診では、保護者がスマートフォンなどから事前に問診票へ回答したり、健診結果をスマートフォンで確認したりできる仕組みが想定されています。
自治体側でも、紙の問診票から健康管理システムへの転記や二重入力を減らし、健診結果をより迅速に把握することが期待されています。
つまり母子保健DXは、単に「紙を電子に置き換える」だけではありません。
保護者の利便性を高め、自治体・医療機関の事務負担を軽減し、必要な支援につなげやすくするための仕組みづくりです。
2026年度末から何が始まる?
ここは誤解しやすいポイントです。
2026年度末から予定されているのは、環境が整った自治体から順次、乳幼児健診の集団健診を中心にPMHを利用した健診の全国展開を開始することです。
全国の自治体が一斉に、すべての母子保健業務をデジタルへ切り替えるわけではありません。
個別健診や電子カルテとのPMH連携など、今後予定されているものや、まだ検討段階のものもあります。
母子保健DXは、段階的に進んでいくものとして捉える必要があります。
紙の母子健康手帳はどうなる?
国は電子版母子健康手帳の普及を進めていますが、今回確認した資料から、紙の母子健康手帳がいつ完全に廃止されるのかは確認できません。
電子版母子健康手帳ガイドラインでは、マイナンバーカードを持たない人やデジタル機器の利用が難しい人への配慮などから、紙との併用を想定した仕組みが示されています。
つまり当面、現場では、
「紙かデジタルか」ではなく、「紙とデジタルをどう併用するか」
という視点が必要になります。
DXで乳幼児健診は本当に楽になる?
先行事例では、メリットが確認されています。
青森県むつ市の実証では、従来の紙による受診では約1時間50分だった健診所要時間が、デジタル受診では約1時間15分となり、約35分短縮されました。
また、デジタル受診者へのアンケートでは、「とても満足した」「満足した」を合わせて**95%**でした。ただし、回答数38の実証段階の結果であり、全国の乳幼児健診に一般化できる数値ではありません。
一方、紙とデジタルの受診者が混在するため、受付方法を工夫したり、過渡期の対応としてスタッフを一時的に1名増員したりした事例も報告されています。
将来的な効率化が期待できても、移行期には新しい業務が発生する可能性があります。
「DXになればすぐ人員や業務を減らせる」と考えるのではなく、移行期の業務フローまで確認する必要があります。
母子保健担当者は今、何を確認すればいい?
まだ具体的な導入時期が決まっていなくても、まず確認できることがあります。
それは、
「自分の自治体では、母子保健DXについて誰が担当し、今どこまで進んでいるのか?」
です。
母子保健DXには、健康管理システム、PMHへの接続、医療機関との調整、住民への周知など、複数の部署・関係機関が関わります。
母子保健担当部署だけで完結するものではありません。
今確認したいチェックポイント
- 自治体内の担当部署・担当者は決まっているか
- 健康管理システムやPMH接続について確認が始まっているか
- 医師会・委託医療機関など、調整が必要な関係機関を把握しているか
- 紙とデジタルが混在する期間の受付・健診動線をどうするか
- デジタル利用が難しい住民への対応をどうするか
すべてを母子保健担当者自身が準備するという意味ではありません。
「誰が担当しているのか分からない」項目があれば、そこが最初の確認事項です。
現場経験から考える|私ならここを確認します
ここからは国の資料に書かれている事実ではなく、行政で母子保健業務に携わってきた私自身の考えです。
私が今も自治体の母子保健担当だったら、庁内の情報システム部門やベンダーとの調整だけでなく、近隣自治体、保健所、医師会など、地域単位でどこまで足並みをそろえられるのかを早い段階で確認します。
乳幼児健診には、保健師だけでなく、医師、歯科医師、看護師、栄養士、歯科衛生士など、多くの職種や関係機関が関わります。
また、里帰りや転居、医療機関の受診を考えれば、自分の自治体だけで仕組みを整えれば終わり、という話でもないと思います。
そして、もう一つ気になるのが紙とデジタルが併存する移行期です。
「DXになれば楽になるはず」と考えるのではなく、
今の業務のどこが変わり、何が新たに発生するのか。
現場の動線を一つずつ確認しながら準備することが大切だと考えています。
まとめ|まず「自分の自治体は今どこにいる?」を確認する
母子保健DXは、2026年度末ですべてが完成する制度ではありません。
乳幼児の集団健診を中心に、環境が整った自治体から段階的に全国展開が始まる予定です。
将来的には保護者の利便性向上や自治体の事務負担軽減が期待される一方、紙とデジタルが併存する移行期には、現場の業務が複雑になる可能性もあります。
だから今、最初に確認したいのは、
「自分の自治体では、誰が担当して、今どこまで進んでいるのか?」
ということです。
まずはそこから確認してみてはいかがでしょうか。
参考資料
この記事の事実関係は、主に以下の資料に基づいています。
| 資料 | 公式ページ |
|---|---|
| こども家庭庁「母子保健DXに関する取組」 | 公式ページ |
| こども家庭庁「電子版母子健康手帳ガイドライン」 | |
| こども家庭庁「令和8年8月7日 母子保健DXに係る自治体説明会」 | 資料掲載ページ |
| 厚生労働省「健康管理システム標準仕様書【第4.1版】」 | 標準仕様書掲載ページ |
| デジタル庁「乳幼児健診のデジタル化で『35分早く帰れる』 青森県むつ市の取組と高い保護者満足度の背景」 | 公式記事 |
| 令和8年度「母子保健デジタル健診実証事業」関連資料 | 母子保健DX公式ページ |

